研究概要 |
一過性脳虚血と再灌流による脳病変の性状について臨床の脳梗塞に近いモデルとして開発された塞栓性脳虚血・再潅流モデルおよび頸動脈一過性結紮モデルについて検討した。塞栓性脳虚血の実験にはC57B1/6Jマウスを用いの右外頚動脈より動脈圧の持続的モニターを行った。血栓注入により虚血を作成、開始30分後より血栓溶解剤を頚動脈内に注入し血栓を溶解した。虚血前、再潅流6時間後、24時間後の神経脱落症状、自発運動量および歩行障害度の計測をした。脳を凍結しumbelliferone法による組織ATP量、3H leucineおよびオートラジオグラムによるタンパク質合成能及び脳血流量の画像化、TUNEL陽性細胞分布域マップの作成を行った。頸動脈一過性結紮モデルにはスナネズミを用い一側或いは両側艘頸動脈を5-20分間閉塞、虚血症状陽性の動物を選び、神経脱落症状の評価を虚血後最長4週間迄行った。以上の検討により以下の結果を得た。血栓注入後に病巣脳血流量は虚血前値の19.8±11%に低下し血栓溶解後に徐々に回復した。神経脱落症状のスコアーは再潅流6,24時間後では徐々に増悪した。他の症状も同様の傾向であった。タンパク質合成能低下域(%対側半球比)は6時間後に28.7±11.5,ATP量低下域は8.7±5.4であり再潅流24時間後は38.5±20.6,38.4±22であった。再潅流24時間後のTUNEL陽性細胞の分布域はタンパク質合成能低下域と良く一致した。ATP量低下域の大きさと神経症状には弱い相関を認めた。以上の結果を頸動脈一過性結紮モデルの結果と比較検討した結果、塞栓性脳虚血・再潅流モデルは臨床例の脳虚血に病態が近い適切な動物モデルと考えられた。
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