ネコ視床の内側外側核-膝上核(LM-Sg)における、脚橋被蓋核(PPT)からの直接経路と(上丘を介した)間接経路を検討し、さらに黒質網様部(SNr)からLM-Sgを介して線条体へ投射する経路を調査した。 (I)PPTの単一細胞がLM-SgおよびSCへ同時に投射しているかを調べるため、LM-Sgと上丘にそれぞれ異なる逆行性蛍光色素を注入した結果、PPTの全標識細胞の35%が軸索分岐によってLM-Sgと上丘を支配していることがわかった。 (II)上丘におけるLM-Sgへの投射細胞とPPTからの神経終末の分布を調べるため、LM-Sgに逆行性トレーサーWGA-HRPを、同側のPPTに順行性トレーサーbiocytinを注入した結果、1)HRP標識細胞は上丘の中間層に点在し、biocytin標識終末は中間層〜深層にパッチ状にあった。2)HRP標識細胞とbiocytin標識終末は一部で重複しており、PPTからの終末がLM-Sgへの投射細胞に直接結合している可能性が示唆される。 (III)LM-SgにおけるPPT、上丘およびSNrからの終末分布を調べるため、これらの領域にbiocytinを注入した結果、1)PPTからの終末はLM-Sgの腹側部に多く、上丘からの終末は背側部に多かった。またSNrからの終末は腹内側部にあり、PPT、上丘、SNrからの終末はLM-Sg内の異なる領域に分布することが明らかになった。2)電顕による終末の形態は、PPTおよびSNrからの終末は小型と大型で、上丘からの終末は小型であった。また大部分の終末は単一にシナプス結合していたが、大型終末のいくつかはシナプス糸球体に関わっていた。 (IV)LM-Sgにおける線条体への投射細胞の分布を調べるため、線条体(尾状核)にWGA-HRPを注入した結果、HRP標識細胞はLM-Sgの腹内側部にあり、SNrからの終末分布域と一致した。このことから、SNrからの終末が線条体への投射細胞に直接結合している可能性が示唆される。 (V)これらの結果は平成14・15年に、日本解剖学会に発表し、論文投稿中である。
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