交感神経節前ニューロンの細胞体は胸髄の側角に存在し、その神経線維を交感神経節に投射する。交感神経節前ニューロンは、自律神経系における重要な中継路である。私達は既に、ラット交感神経節前ニューロンの細胞体の20%がB型モノアミン酸化酵素(MAO-B)を持ち、その他の細胞体はA型モノアミン酸化酵素(MAO-A)もMAO-Bも持たないことを報告した。私達は平成13年度に、ドーパミン神経終末が特異的にMAO-B陽性交感神経節前ニューロンの細胞体にシナプスをつくり、MAO-B陰性の細胞体とはシナプスを作らないことを明らかにした。この結果から、交感神経節前ニューロンに存在するMAO-Bは、ドーパミン神経終末から放出されたドーパミンの分解に関与することが示唆される。平成14年度は、ノルアドレナリン神経終末が特異的にMAO-B陰性交感神経節前ニューロンの細胞体にシナプスをつくり、MAO-B陽性の細胞体とはシナプスを作らないことを明らかにした。交感神経節前ニューロンは脳幹モノアミンニューロンからの自律神経情報の単なる中経路ではなく、統合処理を行っていることを示唆する。さらにMAO-Bは、舌の結合組織の肥満細胞、線維芽細胞、内皮細胞およびシュワン細胞のミトコンドリアに存在することを見い出した。肥満細胞はヒスタミンを合成、放出する。舌の上皮には、ヒスタミンメチル転移酵素が存在することが知られている。MAO-Bはメチルヒスタミンを分解する活性を持つ。以上のことから、舌の肥満細胞に存在するMAO-Bは、ヒスタミンの代謝に関与することが示唆される。
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