研究概要 |
家族性筋萎縮性側索硬化症(FALS)は,Superoxide dismutase 1(SOD1)遺伝子異常が病因と考えられる運動ニューロン疾患である.また,ヒト変異SOD1遺伝子G85Rをマウスに導入することに成功し,G85R Transgenic mouseをヒトALSモデルマウスとして作製し得た.今回,我々は,FALSの剖検例とG85R-Trとの両方を詳細に解析し,以下の新知見を明らかにし得た. 1.運動ニューロンに出現するレビー小体様硝子様封入体(LBHI)とアストロサイト内硝子様封入体(Ast-HI)とは,ヒトFALS及びG85R-Trの病理学的侍徴であると同時に,SOD1遺伝子異常の形態的表出であることが判明した. 2.LBHIとAst-HIとを形成する基本構造物は,FALSとG85R-Tr共にSOD1を主構成蛋白とするGranule-coated fibrilsであった. 3.Copper chaperone for superoxide dismutase(CCS)は、銅をSOD1に特異的な運び,SOD1を活性化させるチャペロン分子であり,このCCSがSOD1と共に封入体内に共存して,封入体形成を増強していたことが判明した. 4.Granule-coated fibrilsが凝集して封入体を形成する過程には,Maillard反応が関与し,advaned glycation endproducts(AGE)の修飾を受けていることが解明できた.しかし,AGE自身細胞毒性を有する不溶性の生成物であり,封入体形成はaggregation toxicityを意味することが分かった. 5.Granule-coated fibrilsはIysosome系とubiquitin系の両方にも溶解されず増力することにより,細胞体を占拠することが明らかになった.これは,Granule-coated fibrilsがAGEの修飾を受けるためであることが判明した. 以上より,SOD1がAGEの修飾を受けることにより,細胞毒性のあるGranule-coated fibrilsが溶解されることなく凝集し,細胞体を占拠することにより細胞死を惹起させる.その際に,CCSが特異的にSOD1と凝集することにより,細胞死を加速することが解明された.
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