目的:本研究では、損傷を受けた中枢神経の再生を促進する方法の開発を目的としている。損傷部位に出現する反応性アストログリアにはテネイシン陽性のサブセットと陰性のサブセットがあり、前者が中枢神経の再生に対して抑制的、後者が促進的に作用し、後者によって突起伸展が誘導されることがin vitroの系で明らかにされてきている。本研究では、テネイシンノックアウトマウス(以下、TN-C K/Oマウスと略す)の中枢神経系に損傷を与え、再生の進行状態や再生を阻害するグリオシスの状況を野生型マウスに損傷を与えた場合と比較検討しながら、再生時におけるテネイシンの機能を明らかにしようとしている。その準備段階として、本年度はTN-C K/Oマウスの胎児より幼若アストログリアの初代培養系を作成し、野生型マウスから調整した幼若アストログリアの初代培養系との違いを免疫組織学的に検討した。 方法:TN-C K/Oマウスの胎生15.5-17.5日目の胎児脳より幼若アストログリア初代培養系を2週間かけて作成した。アストログリアのマーカー抗体であるGFAPを始め、laminin、fibronectin、condoloitine sulfate-6-proteoglicanあるいはin situ hybridization法などを用いて、幼若アストログリアの性状を明らかにした。 結果と今後の計画:TN-C K/Oマウスから調整した幼若アストログリアの初代培養系においても、野生型マウスから調整した幼若アストログリアの初代培養系においても、どのマーカーも十分量発現しており、両者で同じ結果が得られた。このことは、TN-C K/Oマウスにおいて、テネイシンが生体内で発現していないために他の分子が異常に発現したりしていることはないということを示している。今後、このTN-C K/Oマウスを用いて脳損傷部位の再生の進行状況について、野生型マウスの場合と比較検討を行いたい。
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