研究概要 |
平成14年度の研究目的は霊長類について脳幹における下行路投射ニューロンの分布を明らかにすることである。実験は2段階に分けて行われた。1)脊髄の種々のレベルに逆行性の標識物質を注入し、その後の脳幹における逆行性に標識されたニューロンの分布を観察した。その結果、逆行性標識細胞は延髄網様体巨大細胞核(Gi)、下部延髄腹外側核、孤束核、縫線核、延髄網様体小細胞部、内・外側前庭神経核、ventral spinal nucleus、青斑核、脚傍核、中脳中心灰白質の外側部および近傍の網様体、上・下橋網様体核、上丘、赤核大細胞部、Cajalの間質核、Bechterewの核などに観察された。脚橋被蓋核(PPN)では極めて少数の標識細胞が観察された。脊髄に投射する最も密なニューロン群は延髄の腹内側部に存在する延髄網様体巨大細胞核であり、次いで上・下橋網様体核、中脳中心灰白質の外側部の細胞集団、孤束核であった。2)延髄網様体巨大細胞部に標識物質を注入し,その後の逆行性標識ニューロン分布を上位脳幹について観察を行った。その結果、逆行性標識細胞は青斑核、上・下橋網様体核、中脳中心灰白質の外側部および近傍の中脳網様体、脚橋被蓋核、脚傍核背側部、上丘、下丘の中心核、Cajalの間質核、不確帯、ForelのH野、peritrigeminal nucleus, supratrigeminal nucleusなどに観察された。 以上の実験結果から、歩行運動に関与する延髄網様体巨大細胞核は中脳灰白質の外側部とその近傍の網様体(nucleus cuneiformis)、および上・下橋網様体核から強い入力を受け、脊髄に投射することが明らかにされた。大脳基底核の下行路は、PPNに投射するが、PPNからGiおよび脊髄に投射する経路は極めて小量であり、PPNの近傍に存在する介在ニューロンを介してGiおよび脊髄に投射することが予測される。
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