1.ミエリンタンパク質の分解は軸索再生において非常に重要なステップである。オリゴデンドロサイトは中枢神経系でのミエリン形成細胞であるが、中枢神経損傷時のミエリン分解にオリゴデンドロサイトがどのように関わっているかはこれまで明らかでなかった。そこで、本研究はオリゴデンドロサイトのプロテアーゼの機能を明らかにすることを目的とする。 2.マウス脊髄L1レベルで半切して脊髄損傷モデルを作成、プロテアーゼ発現を検討した。傷害後1-14日にニューロプシンとプロテアーゼM発現増強が認められた。 3.脊髄損傷後にL1の発現が変化するかどうかを検討した。その結果、損傷後には後角深層に進展する線維の一部に陽性構造が認められるようになった。 4.プロテアーゼMと軸索再生との関連をみるために脊髄損傷後にプロテアーゼ発現とGAP-43発現との相関を検討した。その結果プロテアーゼ発現とGAP-43発現との間には有意な相関はみられなかった。 5.Experimental allergic encephalomyelitis (EAE)発症マウスをmyelin oligodendrocyte glycoprotein (MOG)の部分ペプチドを用いて作成した。この処置により2-3週でEAEを発症されることができ、発症スコア3以上の重症例ではニューロプシンとプロテアーゼMの発現が顕著に上昇した。また、ニューロプシンノックアウトマウスでも同様にEAE発症実験を行った。その結果、ノックアウトマウスではEAEの進行の遅延が観察された。 6.結論 以上より、脊髄の損傷により、プロテアーゼ及びその基質と考えられるL1の発現に大きな変化が生じることが明らかとなった。また、脊髄の障害に、プロテアーゼが重要な関与をしていることが示唆された。
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