指の運動をつかさどる脳の運動制御機構を明らかにするために、形態学的、生理学的に以下の実験を行ない、大脳皮質、大脳基底核、脊髄について次の事柄を解析して報告した。 (1)3重性逆行標識法により、指の運動に関わる運動ニューロン群をラベルしてその分布、重なりを明らかにした。 (2)皮質内微小刺激により同定された一次運動野の下肢指領域の皮質性入力を解析し、上肢指領域の入力様式との異同を論じた。 (3)大脳皮質-線条体系の投射様式、さらにその場所から大脳基底核内での投射様式を形態学的・生理学的に分析し、大脳基底核が指の運動や上肢の運動にどう関わっているかを検索した。 (4)線条体のパッチ領域に特異的に発現されるミューオピオイド受容体に特異的な神経毒をもちいて線条体のパッチ領域の上肢関連部位を破壊し、順行性変性法を利用して、その投射様式を明らかにした。 (5)線条体のP物質受容体陽性介在細胞を特異的に破壊して、その運動制御に関わる役割を電気生理学的にニューロンレベルで明らかにした。 (6)上記の実験に必要な手法として、脳深部への超音波断層法を用いた薬剤注入法を開発した。さらに、デジタル蛍光写真撮影装置を開発し、報告した。
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