私はこれまでに、シナプシンの三次元構造、シナプシンの二量体形成、シナプシンがATPase(ATP加水分解酵素)として機能する可能性、シナプシンの細胞内局在機構、末梢組織におけるシナプシンの役割を示した。そこで本研究では、以下に示す研究を行った。 (A)シナプシンのATPase活性によって触媒される基質の同定 シナプシン・未知基質・ATPの3者の複合体は、反応後速やかに解離すると考えられる。本研究では、シナプシンCドメインのATP水解活性部分に変異を導入して除いた。この水解活性欠失CドメインはATPおよび基質との結合能を失っていない。そこで水解活性欠失Cドメインと水解活性保持Cドメインを用いて基質を同定した。 変異CドメインをベイトにしてYeast Two Hybrid法により、ラット脳のライブラリーからCドメインに結合する基質の候補タンパク質を得た。現在この候補タンパク質とシナプシンが生体内で結合するか解析中である。 (B)シナプシンが内分泌顆粒の膜融合で果たす役割 内分泌細胞株としてマウス膵β細胞株MIN6とマウス脳下垂体細胞株AtT-20を用い、シナプシンアイソフォームの局在を検討した。内分泌細胞はペプチドホルモンを含む顆粒と生理活性アミンを含む神経小胞様小胞を持つ。現在、シナプシンアイソフォームが顆粒とマイクロベジクルのどちらにアソシエートしているかを、種々のマーカータンパク質(内分泌顆粒:クロモグラニン[論文投稿中])を用い蛍光抗体法とショ糖密度勾配超遠心分画法で解析している。
|