研究概要 |
私は、シナプシンがATPase(ATP加水分解酵素)として働く可能性を示し、これを基にシナプシンの機能解析を行っている。平成14年度に、本研究では以下に示す研究を行った。 (A)シナプシンのATPase活性によって触媒される基質の同定 シナプシン・未知基質・ATPの3者の複合体は、反応後速やかに解離すると考えられる。本研究では、シナプシンCドメインのATP水解活性部分に変異を導入して除いた。この水解活性欠失CドメインはATPおよび基質との結合能を失っていない。そこで水解活性欠失Cドメインと水解活性保持Cドメインを用いて基質を同定を試みた。 変異CドメインをベイトにしてYeast Two Hybrid法により、ラット脳のライブラリーからCドメインに結合する数種類の基質タンパク質を得た。現在この候補タンパク質の至適結合条件と結合部位について解析中である。 (B)シナプシンが内分泌顆粒の膜融合で果たす役割 内分泌細胞株としてマウス膵β細胞株とマウス脳下垂体細胞株を用い、分泌顆粒へのシナプシンアイソフォームの発現・局在を検討した。これまで、ある種のシナプシンアイソフォームが顆粒とアソシエートしていることを蛍光抗体法とショ糖密度勾配超遠心分画法で見出した。また同じ膵β細胞株由来の細胞でもシナプシンの発現パターンが異なっていることを発見した(論文準備中)。 また神経内分泌細胞でホルモンが分泌顆粒に選別される機序の解析中に(Mol.Biol.Cell 2002, 13, 3388-3399)、ラット脳下垂体ではクロモグラニン-セクレトグラニンのコンプレックスを含む分泌顆粒にのみシナプシンが局在していることを見出した(論文準備中)。
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