1)aTTPをノックアウトしたマウスの中枢神経では、脂質酸化を示すMDAの増加、HNEの酸化修飾が亢進しており、神経細胞内のリポフスチンの含有量も増加して、さらに、ビタミンEの過剰投与によって改善することから、酸化ストレスがかかっていることが示された。 2)HNEが酸化修飾しているタンパクの1つはS0D1であることが示され、この修飾によってS0D1のラジカル消去機能が低下して、さらに酸化ストレスが増強している可能性が示唆された。 3)aTTPノックアウトマウスに黒質の細胞毒であるMPTP(15mg/kg)5回/日を急性投与し、1週間後に線条体のdopamineの含有量を測定すると、対象の約50%に減少しており、パーキンソン病の黒質の神経細胞のdopamine産生能に酸化ストレスが影響している可能性が示唆された。しかし、ビタミンEの過剰投与したaTTPノックアウトマウスは逆に全例2日で死亡してしまい、ビタミンEの過剰投与は心血管系などには何ちかの毒性がある可能性を考えている。 4)筋萎縮性側索硬化症のモデルマウスであるG93AS0D1トランスジェニックマウスとaTTPノックアウトマウスを掛け合わせたところ、ロタロッドを用いた運動機能障害を指標とした発症時期が約2週間早くなっていた。骨格筋病理ではより早期に神経原性変化が生じ、脊髄神経細胞の脱落と脊髄前根の神経細胞密度の減少が認められた。筋萎縮性側索硬化症の脊髄神経細胞脱落に発症機序に脂質酸化が関与していることが示された。
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