これまでの研究によりミクログリアはマクロファージとは異なり末梢血管に直接注入した場合にも脳に特異的な親和性をもち、脳に侵潤する能力を持った細胞であること、この親和性を利用すれば末梢血流中から特定物質や遺伝子を脳に特異的に導入できることを明らかにした。この機能はミクログリア細胞表面上に存在すると考えられる分子が脳の血管内皮細胞と相互作用することによると考えられる。そこで、本研究ではミクログリア細胞株からmRNAを精製してcDNAを合成し、ファージディスプレイライブラリーに組み込みをおこなった。また、ランダムペプチドライブラリーも作成し脳特異的接着に関わる脳側の因子(ホーミングレセプター)の検索も同時に行えるシステムを構築した。それぞれのファージ混合液をマウス個体に尾静脈から注入して投与し、潅流後脳を摘出、脳から回収されるファージを増殖後再度尾静脈から注入し、同様の分析を3階繰り返し行って脳特異的移行性を示すファージの濃縮をおこなった。その結果、脳に親和性を持って特異的に侵入するファージを分離することに成功した。現在、ファージがコードしている遺伝子について解析している。これらの遺伝子の共通配列が同定できれば脳を標的化した物質輸送が実用化できると考えられる。
|