2001年度、本研究により得られた新たな知見は2点ある。 1.CHO細胞やHEK293細胞へ外来性にMCH(メラニン凝集ホルモン)受容体SLC-1を強制発現させるとGi/o及びGqへのカップリングが認められる。しかしながら、SLC-1の機能的側面をさらに深く解析するためには本受容体を強制的ではなく、内在的に発現するモデル系を得ることが重要である。多数の細胞株をRT-PCR及びノザンブロットでスクリーニングしたところ、SLC-1内在性高発現株を3株見出した。そのうちのひとつ、ヒトメラノーマ細胞SK-MEL-37細胞においては、MCHはフォルスコリンで誘導させたcAMPを減少させ、さらにMAP kinaseを活性化することがわかった(EC50=28nM)。この活性は百日咳毒素感受性のため、本細胞に発現するSLC-1はGi/oにカップリングする。しかし、強制発現系における結果とは異なり、SK-MEL-37細胞においてはMCHによって細胞内カルシウム濃度の上昇はカルシウムイメージング法によってもリアルタイム測定法によっても認められなかった。これはSLC-1が細胞株において機能的に内在性高発現することを示した初めての結果である。この成果はBiochem. Biophys. Res. Commun.に発表した。 2.yest-two-hybrid法によりSLC-1 C末端部分と結合する因子を脳由来ライブラリーから探索した。その結果、既知分子2つ、新規の脳特異的発現分子1つの単離に成功した。現在引き続き解析中である。
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