本年度に本研究により得られた新たな知見は2点ある。 1.メラニン凝集ホルモンMCHは摂食調節機構の下流に位置する特に重要な"食欲誘起ホルモン"と考えられている。その受容体はオーファンGタンパク質結合型受容体MCHR_1(SLC-1)及びMCHR_2であることが近年同定された。MCHR_1はノックアウトマウスの解析により摂食に非常に重要な受容体であることが明らかになった。MCHR_1の第3細胞膜貫通ドメインに存在するアルギニン123がMCHとの結合に欠かせないアミノ酸であることは既に報告されている。一般的には第3細胞内ループにGタンパク質が結合することが知られているものの、他のどの部分のアミノ酸がMCHR_1を介した情報伝達や膜移行に必要なのかは未だ不明である。そこでsite-directed mutagenesisにより受容体変異体を作成し、細胞にトランスフェクション後、機能アッセイを行った。その結果、グリコシレーションに関係する細胞外アスパラギン残基(N23)が受容体の膜移行及びcalcium influxを経る情報伝達経路に特に重要な役割を果たすことが明らかとなった。この成果はFEBS lettersに発表した。 2.yeast-two-hybrid法及びバクテリアを用いた発現系によりSLC-_1C末端部分と結合する因子を脳由来ライブラリーから探索した。その結果、既知分子3つ、新規の脳特異的発現分子1つの単離に成功した。既知分子のひとつは哺乳類細胞系においてもSLC-1との結合が確認され、受容体の機能そのものにも影響を及ぼすことが考えられる。
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