高次視覚機能に関わる情報統合過程を理解することを目的として、形状知覚と3次元知覚の関係を心理物理学的・計算論的に研究した。 心理物理実験では、形状知覚、3次元知覚、両眼立体視が独立する刺激を生成し、形状知覚と3次元知覚の相互関係を求めた。これにより、従来の実験では混同されていた形状と立体視を分離することができた。具体的には、平成13年度に確立した実験環境・実験プロトコルにより、形状知覚、陰影による3次元知覚、両眼立体視が独立する刺激を生成し、形状知覚と3次元知覚の相互関係を求めた。これは、ランダムな凹凸面に複数のスポットライト照明を照射ことによって実現した。この結果、陰影による3次元知覚は両眼立体視による奥行知覚とは異なった特徴を持つことが示唆された。 計算論的には、物体認識に3次元情報が関与するとしたら、その果たし得る役割と機構が何であるか、を検討した。特に、(1)情報統合の動的機序、(2)形状に基づく領域の群化と、両眼視差に基づく群化の統合機序、を取り上げて検討した。群化と統合に関しては共線形結合と側方性結合を含む初期〜中次視覚のモデルを構築した。ここでは、phase modelを基にして、統合・群化が起こりやすくなる条件について研究した。さらに、情報の統合が面を中心に行われている可能性を検討した。最近の生理実験により明らかにされてきた、V2・V4における面知覚選択性をよく再現するモデルを提案し、ここで知覚される面に様々な属性が付与されていく可能性を検討した。
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