グリア細胞に発現するCa^<2+>透過型AMPA受容体を非透過型受容体に変換するため、グリア細胞特異的に非透過性サブユニットであるGluR2を発現させる以下の実験を行った。譲渡を受けているラットのGluR2(flip)cDNAを2種類の哺乳動物発現用プラスミドにサブクローニングした。すなわち、(1)哺乳動物細胞に対する汎用プロモーターであるサイトメガロウイルスプロモーター(CMV)のコントロール下においたベクターならびに、(2)Glial fibrillary acid protein(GFAP)プロモーターのコントロール下においたベクターを作製した。そして、GFAPを発現しない培養細胞ならびに、GFAPを発現するグリア細胞由来の培養細胞の両者にリポフェクト法を用いて遺伝子導入した。その結果、PCMVプロモーターにGluR2をおいたものはどちらの細胞株でも、GFAPプロモーターにおいたものは、GFAPを発現する細胞株にのみGluR2の発現が見られた。そこで、このGFAPプロモーターのコントロール下にGluR2をおいたプラスミドの、GFAPプロモーター領域からGluR2 cDNA下流のポリアデニレーション部位までを切り出し、BDF1マウス受精卵(父がC57BL/6、母がDBA/2の一代雑種)300個に注入し、状態の良い277個を12個ずつ仮親マウスの卵管内に移植し、5母体から43匹の産仔を得た。これらのマウスの尾を採取しDNAを調製し、GluR2のcDNAの発現を指標にPCRを行ったところ、最終的に7匹(雌4匹、雄3匹)のマウスに遺伝子が伝達された。これらマウスはC57BL/6とDBA/2の雑種であるので、遺伝背景をC57BL/6に揃えるために、戻し交配を行っている最中である。子孫マウスについて、脳を取り出しGluR2抗体を用いてGluR2の発現を調べたところ、7系統のうち、少なくとも1系統においてはC57BL/6と異なったGluR2の発現が小脳においてみられる動物が得られている。
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