我々は、マウスの胎児脳から、分岐したDeltaをコードする遺伝子をクローニングした。大脳の発生過程において、この遺伝子はpreplateの一部であるsubplate neuronに選択的に、かつ一過的に発現し、層構造形成への関与が示唆される。また、大脳皮質ニューロンのprimary cultureに、細胞外ドメインのみを発現させ可溶化したこの分子を加えると、細胞の形態が変化し、進展していた神経突起が著しいretractionをおこす。これらの結果から、皮質を形成するニューロンがsubplateを通り抜けるときにレセプターを介して、subplate上に発現しているこの分子と摂食して、なんらかの調節を受けている可能性が考えられる。さらに、視床から大脳への投射を調節している可能性も考えられる。 この分子の細胞外ドメインにalkaline phosohataseを結合し、293T細胞に導入して、倍地中にフュージョン蛋白質を分泌する系を作った。この倍地中に分泌されたフュージョン蛋白質を精製し、マウスの胎児を用いてこのフュージョン蛋白質がどこに結合するかを検討したところ、受精後14-16日目の大脳皮質に結合活性が認められた。 受精後10日目のマウス胎児の頭部から神経幹細胞を分離し、分化を誘導する条件で培養して、各分化段階の細胞からRNAを抽出し、発現ベクターを用いてcDNAライブラリーを作製した。このライブラリーをCOS7細胞に導入して発現させ、前述のフュージョン蛋白質をプローブに、alkalin phosphatase活性を指標にスクリーニングしたところ、4つの陽性クローンを得た。これらのクローンは、in vitroではプローブに用いたフュージョン蛋白質と強く結合する。現在、これらのクローンの発現部位等の解析をおこなっている。
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