神経細胞電位依存性K+チャネルの密度と性質の調節にαサブユニットとβサブユニットがどのように関与するのかを明らかにするため、本研究代表者がこれまでに用いてきた線条体コリン作動性介在細胞をモデルに、発達過程において、パッチクランプ法を用いて、K+チャネル電流の密度とキネティックスを調べると同時に、記録後パッチ電極で細胞を採取し、各サブユニットのmRNAの発現レベルを定量化し、mRNAの発現量とチャネルの密度や性質との関係から、αサブユニットとβサブユニットの役割を明らかにする方法を用いた。線条体コリン作動性細胞はA電流と遅延整流性電流を持つが、平成13年度では、遅延整流性電流を中心に研究を行った。動物はラットを用いた。本研究代表者らのこれまでの研究によって、成熟ラットの線条体コリン作動性細胞は遅延整流性電流の候補遺伝子のKv1とKv2、さらにβサブユニットのKvβ1とKvβ2を発現することが分かっているが、Kv3遺伝子も候補として考えられる。そこで、今回Kv3.1とKv3.2について調べたが、発現が認められなかった。また、遺伝子と電流との関係を層明らかにするため、抗体を用いた免疫染色を行った。その結果、線条体の大型細胞(コリン細胞と推定される)はKv1.1とKv1.2陽性であることがわかった。電気生理学的な手法を用いて、遅延整流性電流を分離し、その生後発達を調べたところ、生後0日から生後35日にかけて、電流の振幅が単調に増加することがわかった。いっぽう、検出確率法を用いてKv1.2の発現量を調べたところ、電流と平行に生後発達において単調に増加することがわかった。同様にKvβ1とKvβ2の発現量も生後発達において単調に増加することがわかった。これらのことから、線条体コリン作動性細胞において、遅延整流性K+電流の密度の調節にαサブユニットのmRNA量の調節が主要な働きをすることが示唆された。本研究課題及び本研究課題に関連した課題で得られた成果の一部を論文(研究発表)にまとめた。
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