研究概要 |
神経細胞の極性は神経細胞の情報処理に重要な役割を果たす。しかし、神経細胞の極性がいかにして形成されるのか、その分子機構はよく理解されていない。本研究は、申請者が軸索誘導活性を見いだしたCRMP-2を手がかりとして神経細胞の極性形成の分子基盤を明らかとすることを目的とした。 CRMP-2の下流エフェクター分子としてのチューブリンの同定: 我々はこれまでに、CRMP-2が海馬培養神経細胞の軸索に濃縮し軸索形成を誘導することを見いだしている。このことからCRMP-2が神経極性に関わる機能分子である可能性が示唆される。そこで、CRMP-2の作用機構を調べるため、CRMP-2結合蛋白質を検索し、チューブリンが同定された。また、CRMP-2はIn vitroで微小管の形成を促進し、その微小管形成促進活性は59個のアミノ酸配列(323-381aa)に存在することがわかった。また野生型のCRMP-2は神経細胞の突起形成を促進したが、59個のアミノ酸配列を欠くCRMP-2変異体は神経突起形成を促進しなかった。以上の結果から、CRMP-2がチューブリンとの相互作用を介して神経軸索形成を行うことが示唆された。 プロテオミクスを用いた神経極性形成因子の同定と機能解析: つぎに、CRMP-2以外の極性・軸索形成白質群を網羅的にスクリーニングし同定を行うために、プロテミクスの手法を採用した。そして、細胞内の微量蛋白質の検出を可能にするための巨大ゲル二次元電気泳法を独自に開発した。本法は従来の手法と比較して感度が飛躍的に向上し、従来の泳動法の5倍(約11,000個)の蛋白質スポットの検出に成功した。またこのシステムを用いて、神経細胞の軸索形成時に発現が上昇する蛋白質をいくつか検出した。
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