1.遺伝子CBULの発現 共同研究者Christine Thisse(France)らは、既に約5000個に及ぶゼブラフィッシュのcDNAについてrandomにin situ hybridizationを行い、発現パターンのカタログ化を進めている。申請者らは、その中に含まれていた底板特異的に発現する分子3個について、さらに詳細なin situによる発現解析を行うとともに、全長cDNAクローニングによりその構造を明らかにした。そのうち、クローンB1202(CUBLと名付けた)は、神経系にのみ発現し、中脳、後脳の底板、中脳の背側正中、中脳・後脳境界、脊髄においては、尾側に強く、頭側に弱い勾配を持って発現していた。既知分子との相同性は見られず、細胞外に、CUBドメインと、LDL受容体リピート(LDLRR)ドメインをそれぞれ1個ずつ持つ。細胞内は、50個のアミノ酸からなり、Cysを多く含む以外モティーフは見いだせなかった。 2.熱ショックプロモターを用いた異所性発現 研究分担者のKuwadaらは、遺伝子をゼブラフィッシュ熱ショック遺伝子(HSP)プロモーターの制御下におき、異所性に誘導発現できる実験系を開発した。我々は、CUBL遺伝子の機能を調べるため、をHSPプロモーターの下流に繋いだコンストラクトを作成し、これを受精卵に微量注入して、トランスジェニックゼブラフィッシュを作成した。現在、熱ショックによる神経発生の異常などについて、抗体染色を用いて検討中である。 3.MorpholinoアンチセンスDNA注入による発現阻害 申請者らは、ゼブラフィッシュの受精卵にmorpholinoアンチセンスDNAを注入することにより効率よく遺伝子の発現を阻害できることを示した。そこで、CUBL遺伝子に対するアンチセンスDNAを微量注入したのち、神経発生の異常などについて、抗体染色を用いて検討中である。
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