平成13年度の本研究は、虚血性神経細胞死の抑制に関して、ベクター投与による遺伝子治療、RT-PCRによる遺伝子解析を重点的に行い、以下の実績を収めた。 1)遺伝子導入法の研究開発:海馬に直接ベクターを注入する方法について研究工夫を重ね、その成果をMethods in Enzymology (研究発表の項参照)に発表した。 2)海馬錐体細胞特異的なウイルスベクターの開発:アデノ随伴ウイルスは10種類の血清型のが報告され、2型の開発を皮切りに他の型も次々にベクターとして使われ始めている。ウイルスの型による感染の特徴をin vitro(primary culture)とin vivoで検討したところ、2型は海馬錐体細胞特異的な導入を特徴とし、5型は錐体細胞特異的ではないが導入効率は2型より高いことが判った。一方、プロモーターによる差ではCMVよりRSVのほうが神経細胞への導入効率が高いことを確認し、これらの結果を第24回日本分子生物学会で発表した 3)虚血負荷海馬の遺伝子変化の解析:preconditioningにより虚血耐性を獲得させたラット海馬の遺伝子発現変化をDNAチップで解析し、虚血耐性に直結する遺伝子のスクリーニングを行った。さらに、Bc1-2ファミリーについてRT-PCRで検討し虚血耐性獲得時の抗アポトーシス分子の発現を確認し、これらを第24回日本神経科学・第44回日本神経化学合同大会で発表した。
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