研究概要 |
平成14年度は、虚血性神経細胞死の抑制に関して、遺伝子治療用ベクターの開発、超低体温による虚血性神経細胞死抑制の研究を行い、以下の実績を収めた。 1.遺伝子治療用ベクターの開発:アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターによる神経細胞への遺伝子導入についてさらに研究をすすめ、AAV5の血清型及びプロモーターの違いによる導入効率を比較検討した。その結果、神経細胞にはRSVまたはCAGプロモーターとAAV2型でRSVまたはCAGプロモーターが適しており、アストロサイトにはAAV5型ベクターが適していることを確認した。 血清型による細胞への導入効果の差としては、細胞の持つ糖鎖が原因のひとつと考えられ、Maackia amrensis lectin II(MAL II)の分布に細胞間で差の有ることを確認した。さらに、ベクターの至適投与濃度は10^<10>particlesで発現は月単位で継続することも確認した。これらの成果を、Methods28(2):237-47,2002.,Method Enzymol 346:378-393,2002.,ブレインサイエンスレビュー2002.,Neurosci Lett340(2):153-159,2003.に発表した。 2.超低体温による虚血性神経細胞死抑制の研究:ラット頭部異所性移植モデルをもちいて、19℃に脳温19℃での虚血性神経細胞死を検討した。脳温19℃では2時間以上の完全虚血でも脳損傷は殆どみられず、長時間に及ぶ脳虚血による神経細胞死抑制への一つの可能性を示すものと考えられた。この成果はNeurosci Lett325(1):37-41,2002.に発表し、この成果については新聞(日本経済新聞2002年12月2日号、下野新聞2002年12月2日号、科学新聞2003年1月17日号)にも報道された。
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