研究概要 |
ラット胎生期における呼吸中枢の神経回路の特性は,E19において劇的に変化する(E22で出産)・E19を境に,吸息相がそれまで第一相のみ(胎児型)であったものから,それに第二相が加わって,その持続時間が数倍に延長し(新生児型),呼吸性ニューロンも新生児基のものと同じサブタイプが明確に識別されるようになる.本研究の目的は,胎児型と新生児型の呼吸中枢神経回路の本質的な違いを明らかにすることにあった. 本年度は,主に光学的測定法を用いて,胎生期における呼吸性ニューロンネットワークの活動を解析し,その時空間パターンが発達に伴ってどのように変化するかを調べた.膜電位感受性色素で染色したE21,20の標本における腹側からの観察では,呼吸性神経活動は,吻側腹外側延髄(RVLM)の限定された領域つまり顔面神経核尾側領域の外側部分(いわゆる顔面呼吸ニューロングループ,pFRG)から吸息活動に先行して始まり,主に尾側方向に一部は吻側方向に伝播した.続いて吸息相においては,活動のピークは尾側延髄では第XII脳神経根の最吻側レベルの腹外側延髄(CVLM)に出現し,また吻側延髄では,顔面神経核領域(特に外側及び内側)に出現した.さらに頚髄の前角と考えられる領域にも出現した.これらの活動パターンは基本的に新生児ラットの場合と同様であった.一方,E17標本の全て及びE18標本のほとんどでは,呼吸性神経活動はまずCVLM領域に,ほぼ吸息性活動の開始に一致して出現し,主に吻側に向かって伝播した.これに続いて,顔面神経核領域全体に強い活動が出現し,C4吸息性活動の終了後も1-2秒間持続した.E19標本の約半数では,呼吸性神経活動はpFRGから開始した(新生児型)が,それ以外ではCVLMから開始した(胎児型).ただし,E19標本で新生児型の時空間パターンを示した標本でも,C4吸息性活動は第一相のみの短いバーストパターン(胎児型)を示したことから,リズム形成及びネットワーク全体の活動パターンのほうが吸息性活動に比べて,やや早く新生児型へと発達することが示唆された.
|