GnRHニューロンを遺伝子工学的に緑色蛍光タンパク(EGFP)で標識したトランスジェニックラットを作成し、そのニューロンの初代培養系を確立し、生理学的解析を行った。生後3-10日(新生仔)および35-40日(思春期)のラットから麻酔下に脳を摘出し、内側中核、OVLT、内側視索前野を切り出し、酵素処理で分散し、培養した。実験には培養12-24時間のニューロンを供した。EGFP蛍光によりGnRHニューロンを同定し、穿孔パッチクランプ法で膜電位依存性カルシウム電流の解析を行った。新生仔のGnRHニューロンでは低電位活性型(T型)の電流はほとんど認められなかったが、高電位活性型の電流は認められた。このカルシウム電流はニモジピン(L型チャネル阻害剤)とコノトキシンGVIA(N型チャネル阻害剤)でそれぞれ約20%抑制された。さらにR型チャネルの阻害剤であるSNX-482で50%以上が抑制された。しかしP/Q型チャネル阻害剤であるアガトキシンIVAは無効であった。以上から新生仔のGnRHニューロンはL型、N型およびR型のカルシウムチャネルを発現していると考えられる。次に思春期GnRHニューロンについて同様に解析した結果、L型、N型、R型に加えて、T型とP/Q型も発現していることが判明した。すなわち、T型とP/Q型は発達過程で発現調節を受けていることになる。これらのチャネルが思春期に始まるGnRHニューロンの活動変化とどのように関係するのかを今後解明しなければならない。なお雌雄差についても解析を行ったが、有意な差は見られなかった。
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