研究課題/領域番号 |
13680884
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
金子 律子 (大谷 律子) 聖マリアンナ医科大学, 解剖学, 助教授 (00161183)
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研究分担者 |
宮下 知之 財団法人東京都医学研究機構, 東京都神経科学総合研究所・分子生理学部門, 研究員 (70270668)
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キーワード | MAPキナーゼ / JNK / ERK / p38 / 神経細胞 / synapsin I / 女性ホルモン / 視床下部 |
研究概要 |
一昨年度は、PC12細胞を用いて、神経細胞分化時にプロテオソーム阻害剤により誘導されるアポトーシスについて、MAPキナーゼの関与を調べた。また、昨年度は、胎生期ラット視床下部ニューロンの培養細胞を用いて、女性ホルモンが神経細胞に及ぼす影響と、その過程でのMAPキナーゼの関与について調べた。そして、本年度はこの研究をさらに発展させ、視床下部ニューロンが女性ホルモンの影響を受けて、前シナプスの形成が盛んになることと、そのメカニズムについて解析した。さらに、ニワトリの脊髄におけるMAPキナーゼの発現について、神経路や髄鞘形成との関連について調べた。 MAPキナーゼ・ファミリーにはc-Jun N-terminal Kinase (JNK)、Extracellular regulated kinase (ERK)、およびp38の3つのキナーゼが属する。視床下部ニューロンが女性ホルモンによりシナプス形成が増加することは、これまでにも報告があったが、その詳細なメカニズムはまだ不明であった。そこで、今年度は視床下部ニューロンに女性ホルモンが作用する際、シナプス形成に関してどのような影響がでるのかを調べ、女性ホルモンの作用メカニズムをMAPキナーゼの関与の面から解析することを試みた。女性ホルモン添加により、培養視床下部ニューロン内で前シナプス関連蛋白質であるsynapsinIの局在化が起こることを明らかにした。この局在化は、古典的な蛋白合成を介する女性ホルモン受容体を介した作用ではなく、膜付近に存在する受容体およびそこからの情報伝達経路が関与すると考えられた。また、女性ホルモンの添加により、培養視床下部ニューロン内のJNK、p38の活性はほとんど変化がなかったが、ERKの活性および活性型ERKの発現は明らかに増加した。さらに、ERK活性阻害剤は、女性ホルモンによるsynapsinIの局在化を抑えた。さらにsynapsinIのリン酸化が女性ホルモンにより変化することから、膜付近の受容体からsynapsinIのリン酸化に至る経路が女性ホルモンによるsynapsinI局在変化の作用機序と考えられた。
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