研究代表者が、世界に先駆けて開発した母体外(in vitro)での、妊娠後期齧歯類胎仔の生存を可能にする方法、マウス胎仔経胎盤灌流法の応用として、胎仔脳の単一細胞を、蛍光色素(DiI)、green fluorescent protein(GFP)等によりラベルし、蛍光顕微鏡、多光子励起顕微鏡等を用いて連続観察し、ニューロンの発生分化の過程を詳細に解析する方法の確立を試みた。先ず、妊娠中期(胎齢11日目)のマウス胎仔を経胎盤灌流法によりin vitroで生存させ、脳室に脂溶性蛍光色素DiI、DiOを微少量注入して脳室壁の細胞をDiI、DiOで蛍光ラベルし、ニユーロンの発生、migrationの様子を、観察することを試みた。より明瞭な像をえるために、頭部の表皮と骨を除去してカバーグラスで置き換えた。蛍光色素注入の3時間後より、顕微鏡の接眼レンズを脳表面に接近させて、体表より観察、記録する。色素は、脳室壁に接する少数の細胞を明るく染色した。励起光を短時間照射するためのシャッターを用いて、20-30分間間隔で光を照射して、細胞を観察したところ、単一細胞の脳組織内での移動を継続的に長時間観察することができた。今後この方法を、細胞ラベル法観察方法などの点で発展させ、単一細胞の長期間にわたっての挙動、分化の様子を分析することにより、生体内における神経幹細胞の実体や、幹細胞からニューロンが生成する機構、ニューロンの分化の機構についての詳細な知見が得られると期待される。
|