研究概要 |
本研究は延髄縫線核群より脊髄へ下行するGABA及び5-HTニューロン系の呼吸運動制御に果す機能的役割を明らかにする事を目的とした。研究代表者らのこれまでの神経生理学的実験により、脳幹縫線核群の微小電気刺激又は化学刺激により呼吸運動の抑制が引き起こされる事が明らかにされている。本年度は実験動物として成ネコ(10匹)を用い実験を行った。まず、延髄大縫線核(NRM)又は淡蒼縫線核(NRP)内のGABAおよび5-HT作動性ニューロンから横隔神経核への軸索投射の有無を、逆行性HRP法およびGABA又は5-HT免疫組織化学法による二重標識法を用いて検討した。 1.ネコ頸髄(C5)レベルで電気生理学的に同定した横隔神経核の5箇所に5%WGA-HRPを微量(10nl)圧注入し、2日後に灌流固定し、脳幹部の凍結切片(厚さ50μm)を作製した。はじめにHRP含有細胞を可視化するために切片をTMB法により反応した。さらにこれらの切片を抗GAD抗体(または抗GABA抗体)または5-HT抗体を用いて反応し、FITC結合2次抗体を用いて蛍光標識した。これらの切片を明視野および蛍光顕微鏡を用いて観察した。 2.HRPにより逆行性に標識されるニューロンは、脳幹の呼吸関連諸核(橋のNPB-KF(Kolliker-Fuse)核,延髄のVRG(ventral respiratory group),DRG(dorsal respiratory group))及び外側網様体腹側部に分布していた。 3.HRP-FITC二重標識細胞は、GABAニューロンに関しては主にNRM, KF核,Botzinger複合核などで観察され、5-HTニューロンに関しては主にNRPに限局して観察された。 これらの成績から、延髄縫線核から横隔神経核への直接の下行接続があり、横隔膜運動ニューロンに対しGABAニューロンは抑制性、5-HTニューロンは興奮性効果を及ぼしていることが示唆された。
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