研究概要 |
絵画的な奥行き手掛かりであるテクスチャーの勾配と両眼視差を組み合わせて面の傾きを表現する立体図形や,ランダムドットステレオグラムによる立体図形をコンピュータグラフィクスで作成した.まず,サルにGo/No-goタイプの遅延見本合わせ課題を訓練し.1で作成した立体図形を,ステレオディスプレイ上に,グラフィクスコンピュータ(インターグラフ社製,Zx10 ViZual)を使って表示した.課題遂行中のサルの頭頂連合野から単一ニューロン活動を記録し,本年度は面の傾きに対して選択的に反応するニューロンについて絵画的手がかりの影響を集中的に調べた.見本図形に対する頭頂連合野ニューロンの反応を解析した結果,a.テクスチャーの勾配と両眼視差をつかった立体図形に反応する神経細胞が見つかった.1)垂直な面,2)Y軸の回りに左右に45度回転した面,3)X軸の回りに前後に45度回転した面,4)2,3の組み合わせによる4つの斜めの面,の9つの面を使って面の傾きに対する選択性を調べたところ,多くの細胞は面の傾きに選択的であった.次に,b.ランダムドットステレオグラムによる立体図形を使って同様に面の傾きに対する選択性を調べたところ,この細胞は視差信号の勾配によって面の傾きを判断していることがわかった.c.テクスチャーの勾配のみで表現した立体図形を作成し,ニューロンの選択性を調べると,一部の細胞はテクスチャーの勾配だけを手がかりとして面の傾きを判断していることもわかった.以上の結果は頭頂連合野の面の傾きに選択的な細胞は,視差の手がかりとテクスチャーの手がかりを統合して面の傾きを識別していることがわかった.
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