研究概要 |
面の傾きをコードする視差手がかりには,面全体に分布する「視差の勾配」手がかり,あるいは輪郭部分に生じる「幅視差」「方位視差」などがある.また,絵画的手がかりとよばれる,線遠近法やGibsonが指摘したきめの勾配も重要なてがかりである.これまでの我々の研究で,サルの頭頂間溝後方部(CIP領域)の面方位識別ニューロンは,種々の両眼視差手がかりを組み合わせて面の傾きをコードすることが明らかになった.さらに,絵画的な手がかりについて調べたところ面方位識別ニューロンは線遠近法手がかりや,肌理の勾配によって面の傾きをコードしていることがわかった.ところで,このCIP領域の面方位選択性ニューロンが知覚とどのような関係にあるのかは,これまではっきりしていなかった.そこで,本年度は,これらの面方位ニューロンが知覚に直接関係しているかどうかを調べるため,面の傾きの短期記憶に関係するのかどうか,面の傾きを判断して決定することに関係があるかどうかを,遅延見本あわせ課題を用いて調べた.77個のニューロンで面に対する選択性を調べたところ,72個のニューロンが面の傾きに選択的な反応を示した.また,77個のうち63個の面方位ニューロンが遅延期間中に持続的な発火活動を示し,そのうち38個のニューロンは遅延期間中の活動が面方位に対して選択的な反応を示していた.一方,77個のニューロンのうち41個は刺激が見本刺激として呈示提示されるか,マッチ刺激として呈示されるのか,あるいはノンマッチ刺激として呈示されるのかによってその反応が変化した.また41個中30個のニューロンはマッチ刺激として呈示されるのかノンマッチ刺激として呈示されるのかによって反応が変化した.したがってこれらの結果は,面方位識別ニューロンは知覚における面の傾きの短期記憶に関係しており,さらに,面の傾きを判断し決定することに関係していると考えられる.
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