パルボウイルスは感染細胞に様々な変化を誘導し、それはウイルス初期タンパク(NS)による宿主遺伝子の修飾によるとの仮説のもとに、ウイルス感染による宿主細胞の表現型の変化、発現の変化する遺伝子の同定を目的として研究を進め、以下の成果を得た。 1)パルボウイルスに感染した細胞Tリンパ腫由来細胞(C58(NT))はアポトーシスにより死滅するが、一部の耐過細胞(C58(NT)R)はウイルス感染抵抗性、アポトーシス抵抗性、接着性の亢進、造腫瘍性の低下を示した(J. Virol. 2001)。 2)C58(NT)とC58(NT)Rを比較して発現量の異なる遺伝子をrepresentational difference analysis(RDA)により検出し、C58(NT)で発現の亢進が見られたDNA断片7種、およびC58(NT)Rで発現の亢進が見られたDNA断片7種を得た。 3)得られたDNA断片をTAクローニング法によりクローニングし、塩基配列の決定、ホモロジー検索を行った結果、既知遺伝子と高い相同性があった遺伝子8種、既知遺伝子と相同性のないDNA断片2種を明らかにした。残りのDNA断片は重複した既知遺伝子の断片であった。 4)同定された遺伝子のうち、ciliary neurotrophic factor receptor alpha(CNTFRα)とmurine leukemia virus(MuLV)のノーザンブロット解析を行った結果、CNTFRαおよびMuLVの発現量がC58(NT)に比べ、C58(NT)Rで高いことが明らかとなった。また、cathepsin Eに対する抗体でウェスタンブロットを行った結果、cathepsin Eの発現量がC58(NT)に比べ、C58(NT)Rで低いことが明らかとなった。
|