マウスPeg3遺伝子は父親から受け継いだアレルのみが発現するインプリンティング遺伝子である。この遺伝子はC2H2タイプのzinc finger proteinをコードし、マウスの母性行動や細胞のがん化、アポトーシスなどに重要な働きを持っている。 マウスPeg3をbaitとして用い、酵母のGAL4タンパク質を用いたtwo hybrid systemによりPeg3と結合するタンパク質のスクリーニングを行った。Peg3は全長1571アミノ酸からなる大きなタンパク質であることから、baitは全長を用いるものの他、N末側とC末側のそれぞれ約半分をbaitとするものの3種類を用意した。また、スクリーニングには、特にマウスの母性行動やグリオーマにおけるPeg3の働きを明らかにしてゆくことを念頭に、マウス脳のcDNAライブラリーを用いた。その結果、それぞれのbaitについて4x10^6のクローンのスクリーニングから10の候補遺伝子を得ることが出来た。これらの候補遺伝子をFlag-tagとのfusion蛋白質として、myc-tagを付加したPeg3とともにHeLa細胞に強制発現させた。これらのうちの1クローンは抗tag抗体を用いてPeg3を免疫沈降した場合に共沈すること、結合蛋白の側のtagで免疫沈降してもPeg3が共沈することがWestern blottingによって確認されたことから、Peg3蛋白質に結合することが証明された。塩基配列の解析から、このクローンはほぼ全長の14-3-3をコードしていることが明らかとなった。 14-3-3以外の候補遺伝子に関してはHeLa細胞で強制発現させた場合に可溶性蛋白質として抽出することが困難であり種々の方法で細胞内での結合を確認する実験を行っているが、これまでのところ結合の確認は出来ていない。
|