研究概要 |
1.トランスジェニックマウスの作製 マウスプリオンタンパク遺伝子のpromoter, exson, intron, exson2, intron2の基本構造とexson3のORFのシグナルペプチドを含むN-末端は全て共通で、制限酵素SmaIサイト以降のORF全てをヒト型に置換したヒト全長導入遺伝子(Tg-HuW)、SmaI-BstEII間をヒト型配列に置き換えプロセッシングに関連するC-末端をマウスにしたヒト・マウスキメラ導入遺伝子(Tg-ChM)、対照としてORFも全てマウス型のマウス全長導入遺伝子(Tg-HuMo)の3タイプのTgマウスを作製した。続いてこれらをTgマウスをプリオンタンパク遺伝子ノックアウトマウス(以下PrPKOと略す)と交配し、それぞれのマウスについて、ヒトプリオンタンパク質、ヒトプリオンタンパクC末ペプチドに対する抗体を用いて、ウエスタンブロットによりそれぞれの導入遺伝子産物(ヒトプリオンタンパク質)発現を確認した。 2.導入遺伝子発現とプリオンに対する感受性 それぞれのTgマウスの系統における導入遺伝子発現とプリオンに対する感受性を調べるために接種実験を開始した。接種材料は散発性CJD(129Met/Met)患者脳乳剤とCJD-Fukuoka1株マウス脳乳剤を用いた。 その結果、マウス/ヒトキメラプリオンタンパク遺伝子導入マウスではマウス内在性のプリオンタンパク遺伝子の存在がヒト・プリオンの感受性に抑制的に働くことが明らかとなった。しかしながら、同じ導入ベクターを用いながら全マウス型プリオンタンパク遺伝子発現マウスでは内因性のマウスプリオンタンパク遺伝子に相加的に作用することがことが示された。また、これらのマウス/ヒトキメラプリオンタンパク遺伝子導入マウスでは発現量の増加が必ずしも感受性の増加にはならないことも明らかにされた。
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