研究概要 |
本研究では、テレメトリーシステムを活用して、無麻酔、無拘束状態での実験動物の血圧や心拍数、自発活動量を長期間測定し、飼育環境条件の変化が動物の循環動態に及ぼす影響について明らかにするものである。研究期間は平成13年度から平成15年度の3年である。平成13年度においては、以下のように、主として飼育温度とラットの循環動態との関係について検討した。データはすべてパソコンを用いて5分間隔で取得した。収縮期血圧と拡張期血圧から平均血圧や脈圧、心拍数を算出した。 1.予め血圧測定用送信器を埋め込んでおいた5例のSD系オスラットについて、通常の飼育環境条件(温度:22-24℃,湿度:50-60%,明暗周期12時間)を基準として、30℃までの高温状態から16℃までの低温状態までの範囲で段階的に設定温度を変化させた場合の腹部大動脈血圧、心拍数、自発活動量を条件ごとに4〜6日間にわたり記録した。データの詳細については解析中であるが、ラットは高温状態になるほど血圧や心拍数の変動が顕著となる傾向がみられた。すべてのラットで血圧と心拍数、自発活動量は明期に減少し、暗期に上昇する明暗リズム現象が観察され、それらのリズム現象は温度の変化にかかわらず認められた。 2.2例のWistar系メスラットについて同系統のオスで妊娠させ、通常の飼育環境下で、出産直前から出産後9日間までの期間、腹部大動脈血圧の連続記録を行った。その結果、2例共に血圧と心拍数は授乳期においても明期に低く、暗期に高い明瞭なリズム現象が観察された。授乳期間中のラットは比較的安定した循環動態リズムを示していた。ラットの腹腔内に埋め込んである送信器が出産や授乳の障害となるような所見は認められなかった。 3.飼育環境温が急激に上昇した場合のラットの循環動態を把握するために、4例のオス高血圧自然発症ラット(SHR)を用いて腹部大動脈の血圧を測定した。飼育室内の温度を25℃の状態から約2時間の加温によって36℃程度にまで上昇させた。室温の上昇とともにSHRの血圧と心拍数は大きく変動、上昇し、36℃程度になると、脈圧も増加して心臓からの血液拍出量が増加することも伺えた。
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