研究概要 |
平成14年度は、飼育温度とラットの循環動態との関係について前年度から継続して検討した。無麻酔無拘束状態のラットからデータを取得し、収縮期血圧、拡張期血圧、平均血圧や脈圧、心拍数、自発運動について以下のような内容の検討を行った。 1.前年度のラットに加えて6例のSDラット(オス)の追加実験を行った。通常の飼育環境条件(温度:22-24℃,湿度:50-60%,明暗周期12時間)を基準として、30℃までの高温状態から16℃までの低温状態までの範囲で設定温度を変化させた。ラットは高温状態になるほど血圧や心拍数の変動が顕著となる傾向がみられた。血圧と心拍数、自発活動量は明期に減少し、暗期に上昇する明暗リズム現象が観察された。 2.飼育環境温が急激に上昇した場合のラットの循環動態を把握するために、4例のオス高血圧自然発症ラット(SHR)を用いて腹部大動脈の血圧を測定した。飼育室内の温度を25℃の状態から約2時間の加温によって36℃程度にまで上昇させた。室温の上昇とともにSHRの血圧と心拍数は大きく変動、上昇し、36℃程度になると、脈圧も増加して心臓からの血液拍出量が増加することも伺えた。 3.不織布製フィルターキャップを使用した場合のラットの授乳期間におけるケージ内の温度と湿度について検討した。ラット用ポリカーボネイトケージと不織布製フィルターキャップを使用し、5例のSD系妊娠ラットを対象として出産時点から離乳時まで10分ごとに温度と湿度を測定した。出産後、仔の成長とともにケージ内の温度と湿度は上昇した。ケージ内温度は飼育室内よりも3.1〜4.3℃程度高く、湿度は7〜14%程度高かった。不織布製フィルターキャップの使用は感染防御や保温・保湿の点で有用性が高いものの、温度や湿度の過度な上昇を防止する必要があることや、授乳期用としてのケージサイズの再検討も必要であることが示唆された。
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