研究概要 |
本研究では、テレメトリーシステムを活用して、無麻酔、無拘束状態でのラットおよびウサギの血圧や心拍数、自発活動量などを長期間測定し、飼育環境条件の変化が動物の循環動態に及ぼす影響について明らかにするものである。研究期間は平成13年度から平成15年度までであり、平成15年度は、飼育温度とラットの循環動態との関係について前年度から継続して追加実験を行った。さらに、ウサギについてもテレメトリー法により、体温や血圧の記録を行った。通常の飼育環境条件(温度:22-24℃,湿度:50-60%,明暗周期12時間)を基準として、30℃までの高温状態から16℃までの低温状態までの範囲で設定温度を変化させた。以下のような知見が得られた。 1.ラットは高温状態になるほど血圧や心拍数の変動が顕著となる傾向がみられた。いずれの温度条件においても、血圧と心拍数、自発活動量は明期(7:00-19:00)に減少し、暗期(19:00-7:00)に上昇する明瞭な明暗リズム現象が観察された。暗期や明期それぞれにウルトラジアンリズムと思われる変動も観察された。 2.ウサギ(オス)の場合も、通常の飼育環境下(22-24℃)で心拍数や体温、自発活動量は暗期に増加し、明期に減少するという明暗リズム現象が観察された。しかしながら、それらの明暗差はラットのような明瞭なものではなかった。 3.通常の温度条件(22-24℃)から19℃以下の低温環境になるとウサギの心拍数や血圧は明期、暗期いずれにおいても上昇した。一方、28℃以上の高温環境では心拍数は低下傾向がみられたが、血圧は上昇した。 4.ウサギの体温(頸部皮下温)は、飼育環境温度の上昇に伴って高くなる傾向がみられ、暗期の場合特に28℃以上の室温で体温上昇が著明であった。実験例数がまだ少ないものの、これまでの検討結果から、ウサギの場合、19℃以下の室温は循環動態に対して低温ストレスとなり、28℃以上では熱ストレスの影響を受けることが示唆された。
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