全身性エリテマトーデス(SLE)自然発症モデルマウス系を用いた遺伝的解析から、第1染色体テロメアにマップされるFcγRIIB遺伝子のプロモーター領域多型がSLEの自己抗体を含む高IgG血症の感受性遺伝子として作用している可能性を発見した。SLE自然発症系のマウスでは、プロモーター領域のAP-4 binding siteおよびS boxを含むconsensus sequence部位に13塩基ならびにその10塩基下流に3塩基の欠損部が存在している。FcγRIIB遺伝子産物の一つであるFcγRIIB1分子はB細胞上に発現するB細胞活性化抑制分子であり、このプロモーター領域多型は胚中心B細胞上のFcγRIIB1分子の発現レベルの抑制ならびにIgG抗体応答の亢進と相関する。本研究は、SLEマウスにおけるプロモーター領域の塩基欠損部位が実際にFcγRIIB1発現を制御し、B細胞の異常活性化に関与していることを、in vitroおよびin vivoの系で明らかにすることを目的とした。 今年度は、ルシフェラーゼアッセイを用いたin vitroの解析で、第1エキソン上流約800bpのプロモーター領域から第2イントロンまでの領域が転写制御に必要な領域であること、第1エキソン上流約100bpに存在するSLEマウスに共通する塩基欠損部位が転写制御に必須の部位であることを確認した。現在、多型部位を入れ替えた129由来のES細胞株を約500クローン得ており、ノックインマウスを作製する目的で、陽性クローンの同定を進めている。
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