研究概要 |
本研究では,脳波,脈波,血圧,皮膚インピーダンス,皮膚温の各生体情報のなかで,刺鍼の効果が認められる場合に顕著な変化を示す生体情報の変化傾向の特徴及びパターンを各生体情報から抽出した指標により定量し,鍼治療効果の客観的評価方法を確立することを目的としている. 研究を進めていく上で,各生体情報から指標を抽出し,それらの変化傾向及び特徴の定量化が必要不可欠であるが,計測する各生体情報のうち,皮膚インピーダンスに関しては選定した指標の妥当性が十分に確認されていなかった.これまでの実験結果から,刺鍼の効果が認められる場合,皮膚インピーダンスには精神性発汗に起因する一過性の変動が頻繁にみられることがわかっている. 今年度は,まず,皮膚の電気的特性を詳細に表現可能な皮膚の複素インピーダンス軌跡の時間変化を高い時間分解能にて計測する手法及びインピーダンス軌跡の複素平面上における形状を特徴づける4つのパラメータのうち,精神性発汗に起因すると考えられる一過性の変動が顕著反映されるパラメータを見出すことを目的とした. 上述の目的を達成するために,皮膚の複素インピーダンス軌跡を精度良く高い時間分解能にて測定可能な新しい手法を考案した.また,その手法を用いて精神性発汗に起因するインピーダンス軌跡の一過性変動を計測した結果,その変動が顕著反映されるパラメータが2つあることが確認された. 今後は,今年度の研究によって得られた知見を実際の刺鍼実験に適用することが課題となる.その際,信頼性のある知見を得るために,多数の被験者において,温度と湿度といった実験環境を可能な限り制御した上で実験を行なう.さらに,計測した各生体情報のうち,刺鍼の効果が認められる場合に顕著な変化を示す生体情報の変化傾向の特徴及びパターンを各生体情報から抽出した指標により定量化し,鍼治療効果の客観的評価方法を確立する際の知見とする.
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