前年度と同様、ラットの胃粘膜から抽出培養した単層の上皮(RGM1)の中心に人為的な穴を開けて作成した潰瘍モデルを用い、超音波照射群と非照射群とを比較することにより、潰瘍の修復過程に超音波が与える影響を検討した。 今年度得られた新知見 今年度は装置を改良してパルス波を用いて実験を継続した。照射する超音波の周波数は2MHzのままとし、一般的な超音波診断装置で用いられるパルス幅、繰り返し周波数を参考に、パルス幅(バースト幅)200μ/sec、繰り返し周波数1.0kHZとし、昨年と同様の方法で実験した。照射する超音波をパルス波とすることにより、長時間照射に伴う温熱効果を回避できると考えられたため、昨年までの超音波を1-10分間、1回照射する方法に加え、今年度は、潰瘍作成直後から治癒するまで超音波を連続的に照射し続ける方法についても検討することとした。 その結果、1-100mW/cm^2のパワーではいずれの出力、照射時間においても超音波照射群と対照群とで潰瘍の修復速度に有意な差を認めなかった。 以上の結果より、今回実験した条件では潰瘍治癒促進効果は得られないことがわかった。同時に、連続波の照射時にみられた潰瘍治癒抑制効果もみられないことがわかった。 したがって、今後は照射する超音波エネルギーをさらに大きくして検証する余地があると考えられた。照射出力をさらに増加させるためには装置をさらに改良する必要があり、来年度以降もさらに検討を重ねる方針である。 また、今年度用いた照射条件は市販の一般的な超音波診断装置の出力、条件に極めて近く超音波用造影剤組織障害作用についての検証にも適していると考えられる。今後は研究計画当初の予定に従い、本法と超音波用造影剤レボビストを併用することによりレボビストの潰瘍治癒に対する影響も検証する予定である。
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