研究概要 |
本研究は臓器を自在に創造する再生医用へ応用できるような臓器細胞、特に正常な肝臓・腎臓細胞を大量に培養増殖、機能化することを目的とする。肝細胞や腎細胞の培養において、プライマリ培養が報告されているが、in vitroで長期継代培養するのが不可能になる。そこで私達は、牛及びヒト由来の肝臓、腎臓細胞の分離および初代培養の条件を検討し、さらにSV40 largeT(SV40LT)抗原とテロメラーゼ遺伝子hTERTを初代培養細胞に導入することで、遺伝子発現したポジティブコロニー細胞を検出した。方法としてはウシより採取した新鮮な肝臓、腎臓組織片を細切した後、コラゲナーゼとディスパーゼを含む平衡塩類溶液で処理した。その細胞懸濁液を遠心分離して上清(比重の小さい細胞分画)と沈殿(末消化組織片を含む比重の大きい細胞分画)を分取し、それぞれ初代培養した。ヒト細胞は市販されている肝臓・腎臓のプライマリ細胞を用いた。初代培養後一週間以内の肝臓、腎臓由来細胞に、不死化を目的としてpSV3neo(SV40LT抗原およびネオマイシン耐性遺伝子が組み込まれたベクターDNA)やテロメラーゼ遺伝子hTERTをリン酸カルシウム法および電気開孔法により導入した。遺伝子導入細胞の選択および継代培養は、G418添加培養液で、SV40LT抗原の発現は、蛍光組織化学的手法により確認した。hTERTはRT-PCR法にて発現している遺伝子の解析を行った。その結果、初代培養では、比重の小さい細胞分画と組織片を含む比重の大きい細胞分画の両方で細胞増殖を認めた。遺伝子導入後にトリプシンに対する感受性の差を利用して、敷石状形態を呈する上皮様細胞と紡錘形を呈する非実質系細胞に分離して継代することができた。SV40LT抗原を安定に発現する肝臓細胞株としては4株(敷石状形態2株、紡錘形2株)が得られた。一方、hTERTを安定に発現する腎臓細胞株として2株(敷石状形態)が得られた。上皮様肝臓細胞株について発現遺伝子の解析を行った結果、アルブミン、c-Met、およびビメンチンの発現が確認されたが、αフェトプロテイン、デスミン、サイトケラチン19、およびファクターVIIIの発現は確認できなかった。腎臓細胞について、latex beads,アクチン、ビメンチンの発現は確認した。これらのことから、肝臓細胞には肝実質細胞を主とする細胞集団、腎臓細胞はメサンギウム細胞を主とする細胞集団が示唆された。
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