1.ブタ尿路上皮及び間質細胞の初代培養 ブタ尿管、膀胱組織を切除し上皮層と間質層に分け、それぞれ適当な酵素にて消化し単離細胞とし、細胞培養を行った。処理条件の最適化を行った結果、上皮、間質細胞とも少なくとも4、5回の継代は可能であり、少量の組織から必要十分な細胞を確保することが可能となった。 2.コラーゲンゲルを用いた尿管モデル 尿路間質細胞をタイプ1コラーゲンゲルに混和し、管状のmold(鋳型)の中に流し込んで包埋した。この管状構造の内腔側に尿路上皮細胞を播種し、培養液が還流するようにした循環回路中に置いて培養することを試みた。しかし、ブタ間質細胞では、コラーゲンに包埋した場合、ヒト細胞に比べてゲルの収縮や分解が強く認められ、ゲル濃度や細胞数など条件を変えて検討したが、いずれの場合もゲルの収縮や分解によりゲルの菲薄化が認められ、強度的に循環培養回路に組み込むのに不十分であった。 3.尿管無細胞化マトリックスグラフト 尿管組織より細胞成分を除去しマトリックス成分のみからなる尿管無細胞化マトリックスグラフト(Ureteral Acellular Matrix Graft : UAMG)の作成を試みた。ブタ尿管組織を、リン酸緩衝食塩水、DNAse、デオキシコール酸により処理することにより無細胞化が可能であった。次にUAMG内外に上皮細胞、線維芽細胞を播種し、UAMGにおける細胞接着の程度やその後の細胞増殖について検討した結果、UAMG内面に比較し、外面の方が細胞接着、増殖は良好であった。 4.UAMGによるブタ尿管置換モデルの作成 UAMGを用いて、ブタ尿管部分切除後の欠損部を置換することを試みた。全身麻酔下に開腹して中部尿管を約5cm切除し、欠損部をUAMGで置換した。4週後ブタをサクリファイスし、腎、尿管を摘出し、肉眼的及び組織学的に再生状況を観察した。その結果、UAMG部は著明な萎縮と狭窄と生じ、上部尿路は著しい拡張を認めた。縫合部は周囲と強く癒着しており、縫合部からの尿漏れによる炎症が原因として考えられた。本モデルの現状における課題が明らかとなった。
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