研究概要 |
近赤外光を用いた無侵襲血中酸素飽和度計測法(オキシメトリ)として,透過光を用いたパルスオキシメトリ(動脈血酸素飽和度(SaO2)計測法)は,既に幅広く利用されており,さらに反射光を用いた方法は,額・胸部といった様々な部位への適用が可能であることから臨床上さらなる活用が期待されている.しかしながら,パルスオキシメトリによって得られる指標は組織に流入する酸素に関してのみであり,組織の活動に関する酸素消費といった重要な指標を得ることは出来ない. そこで,本研究では組織酸素代謝量(tVO2)計測を行うことを目指し,近赤外光を用いた測定法の開発を行った.tVO2は組織血流量が既知であれば,生理学のフィックの原理の適用から,対象組織に流入した酸素濃度(動脈系)と流出した酸素濃度(静脈系)の差から求めることが可能となる. そこで,SaO2計測には,一般的なパルスオキシメトリの原理(光電容積信号の脈波成分)を使用し,静脈血酸素飽和度計測には,光電容積信号において,基線の変動分が静脈血の容積変動分に対応しているとして測定法の実現を行った. 開発する過程では,測定精度・測定誤差の予想が可能となる光拡散理論・モンテカルロ法を用い,センサの送受光間隔や,測定波長,組織内動・静脈血の容積変化などを取り入れたモデルを作成し,センサのデザイン(CAE : Computer Aided Engineering)を行った. 結果として,750/830nmの2波長を用いた反射型センサを作成し,ヒトにおける実験的評価を行い,センサ送受光間隔:5〜20mmにおいて,理論的に予想した結果と同様の結果を得た.また,組織血流量を求める方法として,測定深度を高めるために,従来のレーザドップラ法とは異なる方法として,散乱光強度を用いた方法を検討しており,理論計算と実験データの比較を行い,理論的に明確なセンサ開発を目指している.
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