医師の触診教育・手術手技訓練を目的とした心臓手術シミュレーション開発

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13680932
• 研究機関: 滋賀医科大学
• 研究代表者: 小森 優 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (80186824)
• 研究分担者: 松田 哲也 京都大学, 大学院・情報学研究科, 教授 (00209561) ; 小山 博史 京都大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (30194640) ; 犬伏 俊郎 滋賀医科大学, 分子神経科学研究センター, 教授 (20213142)
• キーワード: 手術シミュレーション / 仮想現実技術 / haptics / 有限要素法 / 触診シミュレーション

研究概要

本研究の基礎となっているのは、心拍動モデルとそれに対する対話的な視覚・触覚シミュレーションシステム、ActiveHeart Systemである。これは視覚的にはvolume rendering法を用いたrealtime提示を行い、触覚提示には心外壁の拡張、収縮に単純バネモデルによる組織弾性と心内圧を加味したものであった。平成13年度の研究目標として、心拍動モデルに対する詳細な評価を行い、提示手法の改善を行うことをあげた。
以下に、改善内容を列記する。
・surface renderingの採用と表面変形の提示
従来用いてきたvolume rendering法はsegmentationなどの前処理が不要である利点はあるが、組織の力学モデルとの対応がなく、接触による変形を表現することが出来ない。これに対して、器官部位ごとのsegmentationを行い、後述の有限要素モデルを前提とした3次元メッシュ構造を作成し、その最外面にsurface renderingを施した。これにより、各部位が明瞭に識別することが出来るようになった。
・有限要素法の適用による触感realityの向上
組織各部位の弾性特性を正確に反映するために、有限要素法を適用した。拍動により要素配列が動的に変化し、かつ内壁からの内圧をも動的に加味する力学モデルとした。対話性を重視するため、各要素の弾性特性は粘性のない単純Hooke則に従うものとして計算を行っている。この結果、よりrealityの高いシミュレーションが可能となった。
現時点では、術中触診トレーニング環境として、内視鏡挿入のための表皮切開、2指による大動脈の触診などが完成している。今後は、一連の処置をシミュレートするシステムとして、不足部分を構築し、完成に向けて統合を進める。

研究成果

• [文献書誌] Megumi Nakao, Masaru Komori, Hiroshi Oyama, et al.: "Haptic Reproduction and Interactive Visualization of a Beating Heart Based on Cardiac Morphology"MEDINFO2001(V.Patel et al.(Eds)Amsterdam:IOS Press). 933-937 (2001)
• [文献書誌] 中尾 恵, 小森 優, 小山博史, 他: "ActiveHeart System:心臓の視覚・触覚シミュレーション環境の提案と構築"インタラクション2001. 97-104 (2001)
• [文献書誌] Megumi Nakao, Masaru Komori, Tetsuya Matuda, et al.: "4D Visible and Palpable Simulation Using Dynamic Pressure Model Based on Cardiac Morphology"Medicine Meets Virtual Reality 2001. 362-364 (2001)
• [文献書誌] 山本恭弘, 中尾 恵, 小山博史, 他: "有限要素法を用いた心臓大動脈の触診シミュレーション"日本バーチャルリアリティ学会第6回論文集. 421-422 (2001)
• [文献書誌] 黒田嘉宏, 中尾恵, 小山博史, 他: "異なる物理モデルで構成された軟性組織におけるインタラクションのモデル化手法を用いた反力生成変形シミュレーション"日本バーチャルリアリティ学会第6回論文集. 413-416 (2001)
• [文献書誌] 中尾 恵, 小山博史, 小森 優, 他: "軟組織の形状・物理特性に基づいたリアルタイム切開シミュレーション手法と医用実測データの適用"日本バーチャルリアリティ学会第6回論文集. 417-420 (2001)