人工関節摺動面材料としての既存セラミックスの欠点を克服する材料として、セリア安定化ジルコニア・アルミナ ナノ複合材(以下Ce-TZP/A1)につき調べた。 1.ラット筋肉内にCe-TZP/A1とAluminaの試験片を埋入する生体親和性試験では、両者ともに、埋入後1週では手術侵襲による急性炎症が同程度に見られたが、経時的に炎症細胞が減少し、24週では細胞成分の少ない線維性被膜に被われ、その厚みに有意差はなかった。 2.劣化試験として、Ce-TZP/A1とY-TZPの試験片をウサギ脛骨内、生理食塩水(62℃)、autoclave(121℃)の条件におき、XRDで経時的に表面単斜晶率を測定した。18ヵ月で、ウサギ脛骨内では両者ともにほぼ相変態は見られなかったが、62℃生食中では単斜晶率がCe-TZP/A1は初期値レベルであるが、Y-TZPでは著しい相変態を起こした。190時間のautoclave処理でも、Ce-TZP/A1ではほぼ相変態を示さなかった。 3.Ce-TZP/A1、Y-TZP、Aluminaにつきpin-on-disk往復運動型磨耗試験機を用いて磨耗試験を行った。蒸留水潤滑・面圧11.3MPa下では、Ce-TZP/A1の比摩耗量は0.55±0.04×10^<-7>mm^3/Nmと、Alumina(2.12±0.37×10^<-7>)より有意に少なかった。30%牛血清潤滑・面圧50MPa下では、Ce-TZP/A1の比磨耗量は6.74±0.36×10^<-8>mm^3/Nmであり、他二者と有意差はなかった。しかし、36時間autoclave処理した試験片では、Y-TZPが著明な摩耗を示したが、Ce-TZP/A1は未処理群と有意差がなかった。 以上よりCe-TZP/A1は人工関節摺動面材料として十分期待できると考えられた。
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