研究概要 |
研究目的 骨は、有機高分子のコラーゲン繊維の上に無機物質のアパタイトの微結晶が析出し、これが三次元に巧みに編み上がった複合体である。従って、骨のコラーゲン繊維と同様の三次元構造に編み上げた有機高分子繊維表面に骨類似アパタイトを析出させた複合体は、骨と同様の骨結合性と力学的性質を示す骨修復材料として有用である。これ迄に、自己組織化単分子膜を用いた実験により、カルボキシ基がヒトの体液とほぼ等しい無機イオン濃度を有する擬似体液(SBF)中でアパタイトの核形成を誘起する官能基の1つであると推定されてきた。本研究は、カルボキシ基を有する有機高分子がSBF中でその表面にアパタイトを形成する条件を追究することを目的とする。 研究成果 D-マンヌロン酸(M)とL-グルロン酸(G)の比が異なるアルギン酸ナトリウムの水溶液を塩化カルシウム水溶液へノズルから吹き出し、塩化カルシウムアルコール溶液中を通す方法によって、アルギン酸繊維を調製した。この繊維は、水酸化カルシウム水溶液に5日以上浸漬した後、擬似体液(SBF)に浸漬すると、その表面にアパタイトを形成し、そのアパタイト形成能は、水酸化カルシウム水溶液浸漬時間が長くなるにつれ、また、同繊維のM/G比が大きくなるにつれ、大きくなった。これは、Mブロックに結合したCa^<2+>イオンがSBF中に溶出し、繊維上にアパタイトの核形成に有効なカルボキシ基を多数形成すると共に、周囲の液のアパタイトに対する過飽和度を上昇させる。市販のキチン不織布をN,N-ジメチルホルムアミドを含む溶液に浸漬することにより、カルボキシメチル化処理を施し、キチン繊維表面にカルボキシ基を導入した。この不織布を飽和水酸化カルシウム水溶液に7日間浸漬した後、SBFに浸漬すると、繊維の表面に3日間以内にアパタイトを形成した。
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