生分解性スキャホールド表面での細胞内直接遺伝子導入を利用した組織再生

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13680936
• 研究機関: 京都工芸繊維大学
• 研究代表者: 山岡 哲二 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 助教授 (50243126)
• 研究分担者: 木村 良晴 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 教授 (10132276) ; 村上 章 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 教授 (60210001)
• キーワード: 遺伝子導入 / 非ウィルス合成ベクター / 組織再生 / ルシフェラーゼ / 疎水基

研究概要

カチオン性高分子(カチオンベクター)とプラスミドDNAとの複合体を利用した細胞への遺伝子導入法を、組織再生工学に応用するためには、(1)高効率で遺伝子を導入できるカチオンベクターの開発、および(2)ポリ乳酸系スキャホールドからの複合体の徐放化が有用である。カチオンベクター(40モル%カチオン基と60モル%の非電荷親水基を有する高効率ベクター)に、1モル%の割合でステアリル基を導入した新たなカチオンベクターは、上記必須条件(1)および(2)に大きな効果をもたらすことが明らかとなった。従来の複合体では、いわゆるバースト効果により数時間のうちにポリ乳酸スキャホールドからの放出が終了するのに対して、疎水貴導入ベクターを利用したところ1週間にわたる徐放化が確認された。さらに、このベクターは、DNA分子と形成する複合体の形状と物理化学的特性が特徴的であることが明らかになった。すなわち、導入したステアリル基が凝集性疎水場を形成することで、ミセル様の構造を呈し、その結果、ベクター分子とDNA分子間のエンタングルメントが緩和されることで、細胞内でのDNA分子リリースを促進する。その結果、ルシフェラーゼレポーター遺伝子を用いた導入実験では、従来ベクターに比較して顕著な効率上昇が見られた。また、従来より、原因が解明されていなかった過剰量のベクター添加による遺伝子発現効率の低下も効率よくよく改善出来るベクターであることが明らかとなった。さらに、in vivoでの組織再生をめざし、ユビキタスなプロモーターの穎粒にVEGF遺伝子を挿入した発現系を構築し、このプラスミドを導入することによる細胞の定性的変化が確認された。

研究成果

• [文献書誌] A.Okamura, T.Hirai, M.Tanihara, T.Yamaoka: "Synthesis and properties of novel biodegradable polyamides containing α-amino acids"Polymer,43,3549-3554(2002). 43. 3549-3554 (2002)
• [文献書誌] Y.Koyama, E.Yamada, T.Ito, Y.Mizutani, T.Yamaoka: "Sugar-containing polyanions as self-assembly coat of plasmid/polycation complexes for receptor-mediated gene delivery"Macromolecular Bioscience. 2. 251-256 (2002)
• [文献書誌] A.Mahara, R.Iwase, T.Sakamoto, K.Yamana, T.Yamaoka, A.Murakami: "Bis-pyrene-conjugated 2'-O-methyloligonucleotide as a highly specific RNA recognition probe"Angew.Chem.Int.Edit.. 41(19). 3648-3650 (2002)
• [文献書誌] T.Kimura, T.Yamaoka, R.Iwase, A.Murakami: "Effect of Physicochemical Properties of Polyplexes Composed of Chemically Modified PL Derivatives on Transfection Efficiency in vitro"Macromolecular Bioscience. 2. 437-446 (2002)
• [文献書誌] T.Yamaoka, T.Kimura, T.Kitagwa, R.Iwase, A.Murakami: "Effect of chemical features and stability of polyplexes on their gene transfer efficiency"Nucl.Asids Res.Supplement. 2. 107-108 (2002)
• [文献書誌] N.Shimada, K.Oniwa, R.Iwase, T.Yamaoka, A.Murakami: "Selection of RNA-binding peptides containing Arg-rich motif"Nucl.Asids Res.Supplement. 2. 281-282 (2002)
• [文献書誌] T.Yamaoka: "Biological Application of Supramolecular Architectures -Gene Delivery -in "Supramolecular Design for Biological Application"(N.Yui ed.)"CRC Press Inc.. 270-286 (2002)