研究概要 |
生体骨のリモデリング現象の詳細は,臨床医学,バイオメカニクス,および設計工学に対し重要な情報となりうる.本研究では,骨格的に成熟したラットの下肢に作用する力学的負荷を15週間の走行運動により増大させた後,力学的負荷を停止して通常状態に戻した.運動中の0,3,7,15週,および運動停止後の16,22,30週(運動停止後1,7,15週)に脛骨を採取した.運動負荷と運動負荷停止に対する骨のリモデリング反応を,脛骨皮質骨の形態計測と力学試験・および骨幹端部の海綿骨の形態計測により調べた.また,これらの計測,試験と並行して,海綿骨の力学的特性を求めるための力学試験法を開発し,ブタ脛骨海綿骨骨梁の力学的特性分布を求めた.その結果,以下のことが明らかになった. 1)骨幹部皮質骨は,運動負荷に対しては材料特性をわずかに向上させて適応し,運動停止後は材料特性を正常状態に戻して適応する.一方,骨幹端部海綿骨は,運動負荷に対しては骨梁幅を不変のままに保ち,骨梁数を減少させることによって骨量を減少させ,運動停止後は骨梁数を増加させて骨量を緩やかに増加させる. 2)骨幹部皮質骨及び骨幹端部海綿骨の運動負荷に対する反応は成熟度にあまり依存しないが,運動停止に対する反応は成熟度に依存し,成熟骨では未成熟骨よりも反応が鈍い. 3)運動負荷と運動停止に対する海綿骨の反応は皮質骨よりも鋭い. 4)海綿骨の力学的特性は新たに開発した3点曲げ試験法で調べることができる. 5)ブタ脛骨海綿骨骨梁の強度は骨梁位置に依存し,骨幹部近くに位置する骨梁よりも軟骨成長板近辺に存在する骨梁の方が弾性係数および強度とも高い.
|