研究概要 |
切離手術時間を短縮するための切離技術の一つとして,肝臓ガン局部凍結技術の開発を目的として,(1)将来肝臓の冷凍技術として提案している音波を用いた熱音響冷凍技術の開発,(2)冷却切離抵抗の研究および(3)肝臓冷凍針の開発と冷却特性の3つの実験が実施された. 熱音響冷凍では汎用スピーカー(最大出力70W)を用いて冷却実験を行い,スタックが冷却性能に及ぼす影響を調べた.実験では内径1mmの絶縁管を100本束ねたものと,紙ヤスリを渦巻き上に巻いた2種類のスタックをそれぞれ用いて実験し,55Hzで16℃の温度差を得た.また,スタックの表面積は冷却効果に大きく寄与し,温度降下が最大値を示す断面積が存在することが明らかになった. 冷却切離抵抗の実験では,ガン細胞の切離を2次元的に行うため,切離抵抗の小さい冷却温度として0℃〜-3℃の範囲(不完全冷凍範囲)を明らかにした.また,冷却速度の違いによって,切離抵抗が変化することを明らかにしている.この冷却速度は細胞の生死に強く依存するパラメータであることが知られているため,冷却制御を精度良く行うシステムを開発する. 肝臓冷凍針は肝臓内を流れる血液を凍結させることによって止血する働きと上述の切離抵抗を下げる働きを持っている.本開発実験では,冷凍針の形式として針の中に冷却液を通す通過式と,針に冷熱を伝導させる伝導式の二つを考案し,模擬肝臓(豚レバー)を用いて冷凍針の冷却特性を調べた.肝臓局部冷凍は5分以内の時間制限があり,冷凍針単体の冷却能力は通過式が優れている.一方,複数針を利用することによって伝導式でも十分に冷却可能であることが明らかとなった.また,肝臓の冷凍には異方性はなく同心円上に冷凍されており,本研究結果は,数値解析の基本データとして利用し,肝臓固有の熱伝導率の逆予測,冷却針の大きさや間隔の最適化が行われている.
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