研究概要 |
本研究の目的は,マイクロ波を乳房に入射したときの電磁波逆散乱問題に対する精密な解法を提案し,乳房診断に有効な乳がん組織の高精度可視化アルゴリズムを開発することである。以下,平成13年度〜平成15年度に得られた研究成果を要約する。 1.周波数領域逆散乱問題の解析では,2次元及び3次元散乱体に対して共役勾配法又はLevenberg-Marquardt法を用いた。更に,層状スラブに対しては遺伝的アルゴリズム(GA)を適用した。一方,時間領域逆散乱問題の解析では,2次元散乱体及び層状スラブに対して,それぞれ,共役勾配法及びGAを用いた。いずれの場合も,逆散乱問題を非線形最適化問題に帰着させた解析を行い,背景媒質との比誘電率差が大きい散乱体に対して有効な可視化アルゴリズムを導出した。 2.多周波散乱データを用いることにより,高速且つ高分解能な可視化を実現できることを明らかにした。又,GCV関数の曲率半径の絶対値を最小にするように最適正則化パラメータを求めれば,従来のGCV法よりも極めて高速に再構成できることを示した。更に,散乱電界の残差ノルムに応じて正則化項を変化させる新しい手法を提案し,従来の正則化法よりも高速且つ高精度に可視化できることを示した。特に,1次元逆散乱問題の解析ではGAが有効であることを明らかにした。 3.入射波のパルス形状を変化して比誘電率の推定を行い,高周波成分を多く含むパルスを用いた場合に高精度な再構成像が得られることを示した。特に,モノサイクルパルスを用いた場合に比誘電率の推定精度が改善されることを明らかにした。又,GAを用いることによって,極めて不均質性の強い層状スラブの比誘電率を再構成できることを示した。 本研究で提案した高精度可視化アルゴリズムには汎用性があり,乳がん組織のように背景媒質との比誘電率差が大きい散乱体に対しても有効であると結論できる。
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