研究課題/領域番号 |
13680947
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研究機関 | 茨城県立医療大学 |
研究代表者 |
山崎 郁子 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 助教授 (90295428)
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研究分担者 |
根本 悟子 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 助手 (70285055)
澤田 雄二 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 教授 (30162548)
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キーワード | 音楽 / 指尖部皮膚表面温度 / 心電図R-R間隔 / 感情状態尺度 / 交感神経 / 副交感神経 / 自立神経機能 |
研究概要 |
音楽聴取による心理学的効果を見るために、指尖部皮膚表面温度の寒冷負荷試験下での交感神経活動の変化を測定し、また多面的感情状態尺度(以下MMS)を用いての心理学的変化との相関について分析し、さらにその結果を追試するために、心電図R-R変動測定による副交感神経の作用を計測し、比較検討を行った。 方法は健常成人男女各8名(平均23.2±5.3歳)を対象とし、バッハ/管弦楽組曲第3番アリア(以下バッハ)、ヴィヴァルディ/合奏協奏曲「四季」冬第1楽章(以下ヴィヴァルディ)を刺激として用いた。測定は、交感神経活動の変化を指尖部皮膚表面温度の寒冷負荷試験をおこない、副交感神経活動を反映する生理的指標として心電図を記録し、それらのデータより、R-R間隔の平均値、心電図R-R間隔変動係数(以下CV_<R-R>)およびR-R間隔変動スペクトル解析における低周波成分(LF)/高周波成分(HF)(以下単にLF/HF)を算出した。また、すべての楽曲聴取前後にMMSにより感情状態を評価した。 これらの結果から、各楽曲聴取前の心電図R-R間隔の平均値、CV_<R-R>、およびLF/HFには有意差は認められなかった。楽曲聴取によりLF/HFはバッハ聴取時がヴィヴァルディ聴取時よりも低い値を示した(p<0.05)。 一方、MMSの測定では、初期の感情状態と比較し、抑うつ・不安が楽曲聴取により減少した(p<0.01)ほかは、楽曲ごとに変化の方向が異なり、最高点を示した感情カテゴリーは、バッハが非活動的快、ヴィヴァルディでは活動的快、であった。 楽曲ごとに測定された心電図指標および心理指標の相関行列を作成し、有意差が見られたLF/HFに着目すると、バッハでは親和との負の相関(-0.59)、ヴィヴァルディでは活動的快との負の相関(-0.42)が見られた。 心電図R-R間隔変動のLF/HFの値は、副交感神経作用の大きさと負の相関を持つ指標として知られている。今回の結果と指尖部皮膚表面温度の寒冷負荷試験を総合すると、概ねバッハ聴取において交感神経抑制・副交感神経亢進を、ヴィヴァルディ聴取において交感神経亢進・副交感神経抑制を示す整合性をもった傾向が見られた。またこのときの心理指標はバッハでは鎮静的、ヴィヴァルディでは覚醒的傾向を示した。このことは、自律神経機能の検査としての指尖部皮膚表面温度の寒冷負荷試験が、音楽聴取による心理学的変化を反映しうる可能性を示している。
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