研究概要 |
本研究計画は,まず,脳磁界計測データから脳活動の時間・空間パターンを再構成する手法を開発し,さらに,これを用いて脳の言語処理過程の解明をめざすものである. 脳活動の時空間パターン再構成技術に関しては,H15年度はH13・H14年度に引続き提案法の性能を決める要因や誤差を生じる原因についての解析を中心にした研究をまず行なった.すなわち,まずこの再構成技術に関して,測定環境に存在する妨害磁場の影響,空間解像度の決定要因および多数のノイズ源からなる生理学的ノイズの影響などの解析を行なった.また,こ方法において,信号源の向きの最適な(再構成結果において信号対雑音比を最大にするような)決定法を提案した.また,さらに脳活動の再構成結果の統計的優位性を評価する方法について研究を行い,ノンパラメトリック統計や,さらにブートストラップ法を組み合わせた方法について検討を行なった.また,H13年度からの研究成果をすべて含んだ信号源再構成手法をグラフィカルユーザインターフェースを加味し,使いやすいソフトウェアとして広く世界に公開する準備を進めた.本ソフトウェアはH16年度8月にオープンソースとして公開の予定である. また,このマカーク効果を基にした,話し言葉の処理に関するヒトの視覚と聴覚の相互作用現象が脳のどこで起こっているかを検証する実験を行なった.この実験においては,視覚と聴覚の相互作用を示唆する特別な周波数領域のみを取り出し,この周波数成分に対し,前述の信号源再構成手法を適用することで視覚と聴覚の相互作用が起こっている部位を特定し,話し言葉の脳内処理に関する新しい知見を得ることを目標として研究を進めつつある.しかし,メリーランド大学の脳磁界計測装置が設置されている建物の振動に起因する大きなノイズが前述の周波数領域と重なるため現在まで有意味な結果は得られていない.現在このノイズを除去するソフトウェアを開発中である.
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